福島のクラフト蒸留酒最前線|ジン・ウイスキー・焼酎の注目蒸留所を徹底紹介

福島のクラフト蒸留酒最前線|ジン・ウイスキー・焼酎の注目蒸留所を徹底紹介

福島県といえば「日本酒王国」として知られていますが、近年ではその伝統を活かしながら、ウイスキーやジン、焼酎といった多様な蒸留酒の分野でも注目を集めています。老舗の酒蔵が蒸留酒製造に乗り出すケースも増え、日本酒の酒粕を再利用したスピリッツや地元産ボタニカルを活かしたクラフトジンなど、個性豊かな商品が続々と誕生しています。今回は、福島県内の代表的な蒸留所とその製品についてご紹介します。

ウイスキー蒸溜所:世界へ羽ばたく東北のクラフトウイスキー

安積蒸溜所(笹の川酒造・郡山市)

1765年創業の笹の川酒造が運営する「安積蒸溜所」は、戦後すぐにウイスキー製造免許を取得した東北最古の地ウイスキーメーカーです。1980年代には「チェリーウイスキー」が一世を風靡し、現在も販売されています。

2016年に再稼働した蒸留所では、「YAMAZAKURA(山桜)」ブランドを中心に、自社貯蔵原酒を用いたブレンデッドやシングルモルトウイスキーを展開。近年では国内外の品評会でも高評価を獲得しており、福島県を代表するウイスキー蒸留所としての地位を確立しています。

天鏡蒸溜所(磐梯町)

2024年に誕生した会津初のウイスキー蒸留所「天鏡蒸溜所」は、スーパーマーケット「リオン・ドール」と老舗「榮川酒造」が協力して設立。名水「龍ヶ沢湧水」を仕込み水とし、スコットランドの技術を導入した本格派です。

長期熟成型の「天鏡」とスコットランド産原酒を用いた「風(ふう)」という2つのラインを展開。「天鏡」は10年熟成させて2034年以降に出荷予定で、「風」は2024年秋から販売開始しています。

玉野アセンド蒸溜所(相馬市)

震災復興をテーマに設立された「玉野アセンド蒸溜所」は、廃校を再利用したユニークなウイスキー蒸留所です。トウモロコシを自社栽培し、バーボン風のグレーンウイスキー製造に取り組む地域密着型の新鋭。将来的には福島産コーンウイスキーの誕生が期待されています。

クラフトジン蒸溜所:森の香りと日本固有種で世界へ

naturadistill 川内村蒸溜所(川内村)

2024年にオープンした「naturadistill 川内村蒸溜所」は、クラフトジン専門の蒸留所として注目されています。最大の特徴は、日本固有の植物をボタニカルに用いた「固有種蒸溜酒」です。

「かやの実」「タチバナ」「クロモジ」「ニオイコブシ」といったボタニカルを減圧蒸留し、森を思わせる香りと柑橘の爽やかさを併せ持つ独自のジンに仕上げています。村の魅力を世界に発信する精力的な活動も展開しています。

【関連記事】福島・川内村から世界へ──naturadistill 川内村蒸溜所が手がけるこだわりのジンとは 

米焼酎・クラフトスピリッツ:米の旨みを活かした挑戦

奥会津蒸留所(ねっか・只見町)

只見町で2016年に誕生した「奥会津蒸留所」は、米農家が立ち上げた完全ドメーヌ型の米焼酎蒸留所です。「ねっか」シリーズは自社栽培米を100%使用し、吟醸香と旨みが特徴です。

20度の「めごねっか」、60%精米の「ばがねっか」など多彩なラインナップに加え、酒粕から製造する「ねっかウオッカ」や「YUZUねっかウオッカ」も展開。酒粕を堆肥に還元する循環農法の一環として、エシカルな取り組みも高く評価されています。

奥久慈塙蒸留所(塙町)

2021年創業の「奥久慈塙蒸留所」は、地元産麦と良質な水を活かした本格麦焼酎の製造を行っています。代表銘柄「水毬(みずまり)」は、軽やかで透明感のある味わいが魅力。

さらに35度のプレミアム麦焼酎「燈毬(ひまり)」は、東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)2025 焼酎・泡盛部門で最高金賞を獲得。焼酎の新たな可能性を切り拓く存在として、国内外から注目されています。「焼酎って、自由だわ。」というキャッチコピー通り、自由な発想と挑戦が光ります。

日本酒蔵が手がける蒸留酒:粕取り焼酎と新ジャンルの融合

仁井田本家(郡山市)

江戸時代創業の酒蔵・仁井田本家では、自然米仕込みの純米酒造りと並行して、酒粕から粕取り焼酎を製造。その原酒をベースにしたクラフトジン「ふたば」は、トマトやマリーゴールドなどのボタニカルとともに再蒸留され、独特の青く爽やかな香りと甘い香ばしさが特徴です。

ほまれ酒造(喜多方市)

「吟醸粕取焼酎 おんつぁ」は、吟醸酒の酒粕を3kg以上贅沢に使い、甕仕込みと長期熟成によってまろやかで上品な味わいに仕上げた逸品。人気の高さから黒ラベルとして復刻されました。

花春酒造(会津若松市)

300年以上の歴史を持つ花春酒造は、「蒸篭取り式」による伝統製法で5年以上熟成させた粕取り焼酎を製造。力強い香りとまろやかな熟成香を併せ持ち、酒粕の奥深さを堪能できる逸品です。

いずれも清酒製造の副産物を有効活用したスピリッツで、各蔵の醸造技術と地域素材が見事に融合しています。

福島発、世界へ広がる蒸留酒の未来

福島県では、日本酒の伝統を継承しながら、新たな蒸留酒の可能性を切り拓こうとする動きが加速しています。ウイスキー、ジン、焼酎、ウォッカ──そのいずれもが、地元の水・米・植物といった素材、そして造り手の情熱によって生まれる「福島ならではの味わい」を備えています。

国内外の品評会で評価される銘柄も増えており、今後さらに福島発のクラフトスピリッツが世界に広がっていくことは間違いありません。日本酒だけではない、福島の新たな酒文化にぜひご注目ください。


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