全国新酒鑑評会「金賞最多」の県・福島 | その強さの秘密と、県産米で挑む注目蔵4選

全国新酒鑑評会「金賞最多」の県・福島 | その強さの秘密と、県産米で挑む注目蔵4選

全国新酒鑑評会とは?

全国新酒鑑評会は、酒類総合研究所が毎年実施する日本最大の清酒品評会です。

対象は「酒造年度(7月1日〜翌6月30日)」に造られた清酒で、全国の製造技術と酒質動向の把握・向上を目的としています。

香りや味わいの調和、酒質のきれいさ、余韻のまとまりといった“仕上がりの完成度”が評価の中心です。

令和6酒造年度(2025年5月発表)は、出品809点、入賞410点、金賞202点という結果でした。入賞酒が選ばれ、その中から特に評価の高い酒に金賞が与えられるため、金賞は「全国の中でも完成度が高い酒」として位置づけられます。

その全国新酒鑑評会で、近年結果を積み上げているのが福島県です。令和6酒造年度は入賞30点・金賞16点を獲得し、金賞数は兵庫県と並ぶ全国最多タイとなりました。これまで福島県は合計12回の金賞数日本一を獲得しています。

山田錦が8割を占める世界 なぜ福島は勝てるのか

全国新酒鑑評会の出品酒を原料米の観点から見ると、山田錦の比率が高いことが分かります。令和5酒造年度の分析では、出品805点のうち643点が山田錦を使用しており、およそ8割を占めます。 さらに、その山田錦の中でも兵庫県産の比率が高いことが示されています。全国的には、山田錦、とりわけ兵庫県産を使って出品する蔵が多い。これが鑑評会のひとつの前提です。

また、かつては山田錦の使用割合によってⅠ部・Ⅱ部に区分して審査する仕組みがありましたが、平成22酒造年度に廃止されました。山田錦以外の原料米の実力向上が背景にあり、現在は原料米の違いで審査の枠が分かれることはありません。各地の酒米を使った出品酒が、同じ審査の中で酒質そのもので比較されます。

その中で福島県では、県産米を選んで出品し、結果を残している蔵もあります。その選択を支える要素の一つが、県オリジナルの酒造好適米「夢の香」「福乃香」の存在です。

福島の二枚看板:「夢の香」と「福乃香」の実力

夢の香(ゆめのかおり)

夢の香は、福島県が開発したオリジナル酒造好適米です。五百万石と比べて心白が多めで大粒、吸水性が高く、香りの豊かな酒になりやすい特性を持っています。廣戸川(松崎酒造)や田島(会津酒造)など、全国新酒鑑評会で金賞を獲得した蔵が、夢の香を40%まで磨いて出品した実績があります。

福乃香(ふくのか)

福乃香は、夢の香の課題を受けて生まれた福島県の酒造好適米です。夢の香は心白が大きいため、大吟醸レベルの超高精白(35%前後)にすると砕米が増えやすく、吟醸用には山田錦など県外産米を使わざるを得ないという状況がありました。その壁を越えるために福島県農業総合センターが育成したのが福乃香です。夢の香や五百万石より溶けやすく、きれいでバランスの良い酒質に仕上がりやすいとされており、超高精白の吟醸酒を県産米で実現することを目指して設計されました。

“福島モデル”を支える仕組み

福島が高い評価を受け続けている理由は、米の品質だけではありません。蔵の垣根を越えた技術の共有文化が、大きな力になっています。

その中核として語られるのが、福島県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターによる技術支援と、「福島流吟醸酒製造マニュアル」の存在です。吟醸酒を高い再現性で造るためのノウハウが体系化され、県内の蔵に広く共有されてきました。

また、1992年に設立された清酒アカデミー職業能力開発校では、若い蔵人の育成が行われています。さらに、高品質清酒研究会(通称:金とり会)のように、蔵同士が情報交換しながら技術を高め合う場があることも、福島らしさの一つです。香りの狙い方や麹の扱い、酒母や仕込みの考え方など、日々の現場で得た気づきを持ち寄り、次の造りに生かしていく。そうした積み重ねが、県全体の底力になっています。

このように福島の強さは、米だけでなく、技術支援・人材育成・情報共有といった要素が重なって生まれています。なお酵母についても、うつくしま夢酵母、うつくしま煌酵母といった県オリジナルの酵母が広く使われており、香りの表現を支える要素の一つになっています。

県産米で金賞を獲った注目蔵4選

① 廣戸川(松崎酒造)× 夢の香

松崎酒造の「廣戸川 大吟醸」は、原料米に夢の香を使用し、精米歩合40%の仕様です。杜氏が初めて全国新酒鑑評会に出品した際、山田錦ではなく夢の香を選んで金賞を獲ったというエピソードが知られています。地元の米で王道と真っ向から勝負した一本です。

② ロ万(花泉酒造)× 福乃香

花泉酒造の「口万 純米大吟醸」は、福乃香35%という超高精白米を使用しており、「福乃香が鑑評会レベルで十分機能する」ことを証明した一本です。南会津町産の福乃香を使い、もち米四段仕込みなど蔵独自の手法とも組み合わせており、地域性と技術の両面から語れる銘柄です。

③ 田島(会津酒造)× 夢の香 + 福島酵母

こちらの会津酒造も南会津町に蔵を構えます。金賞を受賞した「純米大吟醸 田島」は原料米として南会津町産の夢の香40%精米、酵母も福島県の酵母を使用しています。すべてを福島県産にこだわった、蔵元の技術の高さを証明する1本です。

④ 会津中将(鶴乃江酒造)× 福乃香 + 会津産山田錦

鶴乃江酒造は「福島の酒米で金賞を取りたい」という想いから、福乃香と会津産山田錦を使用した大吟醸で金賞を受賞しています。使用比率は福乃香81%・会津産山田錦19%で、福乃香の溶けやすさと山田錦の骨格を組み合わせた酒質が、鑑評会でも高い評価を得ました。

まとめ

全国の出品酒の約8割が山田錦を使う中で、福島県は独自の酒米(夢の香・福乃香)と酵母を育て、技術共有の仕組みを整え、若い蔵人を育て続けてきました。

全国新酒鑑評会の金賞数日本一を合計12回獲得してきた背景には、個々の蔵の努力だけでなく、県全体で積み上げてきた技術と人材育成の仕組みがあります。原料米の選択は蔵それぞれの判断ですが、その中でも県産米にこだわって金賞を獲りにいく蔵の存在が、福島の酒に独自の厚みを加えています。

廣戸川・ロ万・田島・会津中将、それぞれ異なる個性を持ちながら、いずれも福島で培われた技術を礎に全国最高峰の評価を得た銘柄です。一本の金賞酒の背後にこうした物語があることを知ると、その酒をより味わい深く楽しめるはずです。ぜひ、その一杯から福島の実力を感じてみてください。


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