福島県二本松・人気酒造の酒蔵見学レポート|フレッシュエイジングと瓶貯蔵のこだわり

福島県二本松・人気酒造の酒蔵見学レポート|フレッシュエイジングと瓶貯蔵のこだわり

福島県二本松市にある「人気酒造」を訪れ、酒づくりへのこだわりや製法についてお話を伺ってきました。

「吟醸しか造らない、手造りでしか造らない」という言葉を掲げるこの蔵は、2011年の震災を経て設備を一新しながらも、昔ながらの技と今の感性をかけ合わせた日本酒を造り続けています。

今回の見学では、特に印象に残った4つのこだわりを中心に、その魅力を紹介したいと思います。

香りを封じ込める技術「フレッシュエイジング」

最初に教えていただいたのが、人気酒造独自の火入れ方法「フレッシュエイジング」です。 搾りたての香りや味わいをできるだけ損なわずに火入れし、そのまま瓶で熟成させるという、手間のかかるけれどとても丁寧な工程です。

流れとしては、以下のような順番で進みます。

マイナス3℃まで急冷  搾りたてのお酒をすぐに一気に冷やし、鮮度を保ちます。

低温ボトリング  冷えたままの状態で瓶詰め。香りや繊細な風味を保ちやすい状態で瓶詰めされます。

瓶のまま低温殺菌(パストライザー) 
 瓶詰めされたお酒に温水シャワーをかけ、63℃までやさしく加熱。瓶の中でそのまま火入れが行われます。

再冷却して瓶貯蔵  加熱後はすぐに冷却し、瓶のまま低温で熟成させていきます。


本来、火入れは雑菌を抑えるための工程ですが、人気酒造ではこの作業が“香りと味わいをつくる”ための大切なプロセスとして位置づけられているのが印象的でした。

実際に試飲させていただいた純米大吟醸は、火入れをしているとは思えないほどみずみずしく、まるで生酒のよう。ほんのりとした微発泡感があり、香りもふわっと立ち上がってきて、口に含んだ瞬間、思わず笑みがこぼれました。



飲みやすくて美味しい、人気酒造のスパークリング日本酒

人気酒造では、スパークリング日本酒にも力を入れています。製法には、シャンパンと同じ「瓶内二次発酵」を採用。発酵中に自然に生まれるガスによって、泡はきめ細かく、口に含むとやわらかく広がっていきます。

実際に試飲させていただいたスパークリング酒は、ふわっと香りが立ち上がり、口当たりはなめらかで軽やか。甘みや香りが控えめで、すっきりとした後味でした。料理と合わせても楽しめる、バランスのよい仕上がりだと感じました。

また、日本酒にあまりなじみのない人にも飲みやすいよう、低アルコールタイプの日本酒も用意されています。「日本酒はちょっと難しそう」と感じている方にも、気軽に楽しめるよう工夫された商品展開が印象的でした。

こうしたスパークリング日本酒でも、火入れの工程にはパストライザー(温水シャワーによる低温殺菌)を使用。酵母の働きを適切に止めることで、泡の繊細さや味わいの安定性をしっかりと保っているそうです。丁寧な品質管理からも、酒づくりへの真摯な姿勢が伝わってきました。

「貯蔵タンクがない酒蔵」の品質管理

人気酒造では、一般的な酒蔵に見られるような大きな貯蔵タンクを使わず、お酒はすべて瓶に詰めた状態で貯蔵・熟成されています。

タンクで貯蔵すると空気に触れる面積が大きくなり、酸化のリスクが高まりますが、瓶で管理することでそれを大きく抑えることができます。

この“全量瓶貯蔵”という方針により、搾りたての香りや味わいを保ったまま、時間をかけてゆっくりと熟成させることが可能になっているのです。

また、火入れについても細やかな配慮がなされており、多くの商品では「瓶詰め時の一回のみ」あるいは「低温殺菌」が採用されています。熱による風味の変化を最小限にとどめることで、お酒本来の個性をしっかりと引き出していると感じました。

木桶発酵が生み出す、やわらかな味わい

蔵の中に並んでいたのは、見上げるほど大きな杉の木桶でした。なかでも「7尺桶」と呼ばれる桶は、直径も高さもあり、容量はおよそ6,500リットル。迫力のある佇まいに圧倒されます。 材料には樹齢約100年の杉が使われており、きちんと手入れをすれば、桶そのものも100年以上使い続けられるそうです。


木桶を使った発酵は、いまでは全国的にもかなり珍しいそうですが、人気酒造ではこの方法を大切に守り続けています。木の表面に棲みつく微生物が、発酵をやさしく支え、金属製タンクでは出せない複雑でまろやかな味わいを生み出してくれるとのことでした。 仕込みの工程では、蒸し米づくりに実際に「和釜」が使われていました。昔ながらの道具を今も現役で使い続けている姿に、伝統を大切にする姿勢が感じられます。効率よりも、香りや味わいを優先する丁寧な酒づくりに、蔵のこだわりがしっかりと表れていました。

おわりに:伝統と革新のどちらも、まっすぐに

人気酒造を訪れて感じたのは、昔ながらの技と現代の技術が無理なく共存している酒づくりの姿でした。 木桶といった伝統的な道具を使い続けながらも、マイナス3度での瓶詰めや低温殺菌といった最新の工程を取り入れ、どの工程にも「いちばんおいしい状態で届けたい」という想いが込められているのが伝わってきました。

また、酒粕を活用したブランド牛「福粕花(ふくはっか)」の取り組みなど、地域とのつながりを大切にしている点にも共感を覚えました。

伝統を守りながら、今の食卓にも自然になじむお酒をつくる。そんな人気酒造の姿勢が、一本一本のお酒にしっかりと息づいているように感じます。

ぜひ一度、ワイングラスで味わってみてください。その香りの広がりと、やわらかな口当たりにきっと驚かれると思います。

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