
中級者向け日本酒用語解説|製造工程・ラベル表示・香味の意味をわかりやすく解説
日本酒には、原材料や製造工程、味わいの表現などに関して多くの専門用語が使われています。それぞれの言葉には、酒造りの背景や職人のこだわりが込められており、意味を知ることで日本酒の楽しみ方はさらに広がります。本記事では、酒米や麹、酒母、もろみなどの製造に関する用語から、味や香りの評価、温度帯、酒蔵に関する言葉まで幅広く紹介します。銘柄選びやテイスティングを一層楽しむために役立つキーワードをカテゴリ別に整理しました。
【1】製造工程に関する基礎用語
精米歩合(せいまいぶあい)
米の外側をどの程度削ったかを示す割合で、日本酒の香味やグレードに大きな影響を与えます。たとえば「精米歩合60%」とは、玄米の40%を削り落としたことを意味します。数値が低いほど雑味が少なく、上品で繊細な味わいに仕上がる傾向があります。
酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)
日本酒造りに適した特別な酒米で、心白(しんぱく)と呼ばれる白いでんぷん質の中心部分が大きく、雑味の原因となるたんぱく質が少ないのが特徴です。代表的な品種には「山田錦」や「五百万石」「雄町」などがあります。
生酛(きもと)
伝統的な酒母の製法で、自然の乳酸菌を取り入れて酒母を育てる方法です。複雑で力強い味わいの酒に仕上がる傾向があります。山卸しという米をすりつぶす作業を伴うのが特徴です。
山廃酛(やまはいもと)
生酛から派生した製法で、「山卸し」工程を廃止したことからこの名があります。自然の乳酸菌を利用しつつも、労力を軽減した近代的な伝統製法として広く使われています。
速醸酛(そくじょうもと)
近代の標準的な酒母製法で、人工の乳酸を加えることで雑菌の繁殖を抑え、酵母を短期間で安定的に育てる方法です。香り高くすっきりとした酒に仕上がりやすいのが特徴です。
酒母(しゅぼ)
アルコール発酵に必要な酵母を健全に増殖させるための元種です。代表的な製法には「生酛」「山廃酛」「速醸酛」があり、味わいの骨格や酸味に違いをもたらします。
三段仕込み(さんだんじこみ)
蒸米・米麹・水を3回に分けて仕込む工程。酵母の発酵環境を安定させ、日本酒のバランスの良い味わいを生み出すための基本手法です。
【2】名称分類・表示に関する用語
特定名称酒(とくていめいしょうしゅ)
日本酒は原料や精米歩合によって「純米酒」「本醸造酒」「吟醸酒」など8つの特定名称に分類されます。ラベル表示の理解は酒質選びの重要なヒントになります。
生酒(なまざけ)
一度も火入れ(加熱殺菌)をしていない日本酒。酵母や酵素が生きており、フレッシュでフルーティーな風味が特徴です。要冷蔵で保存されます。
生貯蔵酒(なまちょぞうしゅ)
搾った酒を一度も火入れせずに貯蔵し、出荷時に瓶詰め前に一度だけ火入れを行う酒です。生酒のような風味と、安定した品質を両立しています。
生詰酒(なまづめしゅ)
搾った直後に火入れをしてから貯蔵し、瓶詰め時には火入れを行わない酒です。貯蔵中に熟成が進みつつ、出荷時には生酒に近いフレッシュさが残るのが特徴です。
無濾過(むろか)
ろ過工程を経ずに瓶詰めされた酒で、味わいにコクや米本来の風味が残ることが多いです。「無濾過生原酒」などの表記でも見られます。
原酒(げんしゅ)
加水調整を行わない日本酒のこと。ものによってはアルコール度数が17〜20度と高く、味わいに厚みとインパクトがあるお酒が多い傾向にあります。
古酒・長期熟成酒(こしゅ・ちょうきじゅくせいしゅ)
貯蔵期間が3年以上にわたる熟成酒の総称で、琥珀色に変化し、ナッツや干し果実のような香りと深い味わいが特徴です。近年はヴィンテージ日本酒として再評価が進んでいます。
【3】酒質・テイスティング・評価に関する用語
日本酒度(にほんしゅど)
甘辛の目安を示す指標で、+の値が大きいほど辛口、−が大きいほど甘口とされます。ただし、酸度とのバランスにより実際の味わいの印象は変化します。
酸度(さんど)
酒に含まれる有機酸の量を示す指標です。酸味の強さだけでなく、飲みごたえや食中酒としての相性にも影響します。
吟醸香(ぎんじょうこう)
吟醸酒に特有の果実様の香りの総称。酢酸イソアミル(バナナ様)やカプロン酸エチル(青リンゴ様)といった香気成分に由来します。
含み香(ふくみか)
口に含んだ際、鼻に抜けて感じられる香り。酒の余韻や奥行きを決定づける重要な要素です。
余韻(よいん)
飲み終えた後に残る香りや味わいの持続性。酒質の完成度を判断するポイントの一つです。
キレ
後口の切れ味。味がすっと引くかどうかを示し、食中酒としての適性にも関係します。
【4】日本酒文化・背景にまつわる用語
杜氏(とうじ)
酒蔵における製造責任者であり、酒造技術の中核を担う職人。伝統を受け継ぎつつ、現代の酒造りを牽引しています。
蔵元(くらもと)
酒蔵の経営主体を指し、家族経営の小規模蔵から企業型の酒造会社まで様々な形態があります。ブランド方針や商品構成にも大きく関わります。
杉玉(すぎたま)
酒蔵の軒先に吊るされる杉の葉で作られた球体の飾り。新酒の完成を知らせる伝統的なシンボルです。
これらの用語を理解することで、日本酒の背景や造り手の意図をより深く汲み取ることができ、テイスティングの楽しみも広がります。中級者から一歩進んで、より確かな知識で日本酒の世界を味わってみてはいかがでしょうか?