福島の新酒を楽しむ|しぼりたてとの違いと旬のおすすめ日本酒
冬の訪れとともに、福島県内の酒蔵からその年の新酒が届き始めます。
秋に収穫された米で仕込み、発酵を終えたばかりの日本酒は、みずみずしい香りや軽快な酸、できたてならではの若々しい味わいが魅力です。毎年この季節を楽しみにしている日本酒ファンも多いのではないでしょうか。
一方で、新酒の商品には「しぼりたて」「初しぼり」「生酒」「生原酒」など、さまざまな言葉が並びます。似ているように見えますが、すべてが同じ意味というわけではありません。
この記事では、新酒の意味や福島で新酒が造られる時期、新酒ならではの魅力を解説します。ふくしま彩り便でも販売実績のある福島の新酒もあわせて紹介しますので、冬の一本を選ぶ際の参考にしてください。
新酒とは、その年に新しく造られた日本酒
新酒とは、一般的にその年や酒造年度に新しく造られた日本酒を指します。より狭い意味では、その年に収穫された新米を使って造られた日本酒を新酒と呼ぶこともあります。
ただし、日本酒の商品名に使われる「新酒」には、全国で統一された厳密な使い方があるわけではありません。その酒造年度に造られた酒を広く新酒と呼ぶ場合もあれば、冬に発売される熟成前の若い酒を指して使う場合もあります。
新酒と聞くと、火入れをしていない生酒をイメージするかもしれません。しかし、新酒のなかには火入れをした商品や、出荷前に一度だけ加熱処理をした生貯蔵酒もあります。
新酒は「いつ造られた酒なのか」を示す言葉であり、火入れの有無を表す言葉ではありません。
新酒が11月や12月に多く登場する理由
福島の新酒は、早いものでは11月ごろから登場し、12月から翌年2月にかけて種類が増えていきます。
新酒がこの時期に多いのは、秋に収穫された米を使って酒造りが始まるためです。
収穫された米は精米され、洗米や浸漬を経て、蒸される工程をたどりながら日本酒の原料になります。その後、麹や酒母を造り、蒸した米、麹、水を3回に分けて仕込む三段仕込みを行います。
仕込みを終えた醪は、通常3週間ほどかけて発酵します。吟醸酒のように低温でゆっくり発酵させる日本酒では、さらに長い時間をかける場合もあります。
秋の収穫から精米、仕込み、発酵、搾りまでには一定の時間が必要です。そのため、その年の米を使った新酒が酒蔵から届くのは、早くても11月ごろになるのです。
新酒としぼりたては何が違う?
新酒と並んでよく見かけるのが「しぼりたて」という言葉です。
しぼりたては、醪を搾って日本酒と酒粕に分けた後、比較的早い時期に瓶詰め、出荷された日本酒を指します。
新酒が「いつ造られたか」を表すのに対し、しぼりたては「搾ってから間もないこと」を表す言葉です。
しぼりたての商品は火入れをしていない生酒が多いものの、すべてが生酒とは限りません。搾った後は加熱せずに貯蔵し、瓶詰めの前に一度だけ火入れをする生貯蔵酒もあります。
また、「初しぼり」という言葉もありますが、その蔵の酒造期の最初や初期に搾られた日本酒に使われる言葉です。どの仕込みを初しぼりとするかは酒蔵や商品によって異なります。
整理すると、新酒は造られた時期、しぼりたては搾ってからの新しさ、初しぼりはその蔵で搾られた最初の日本酒ということを表します。商品を選ぶときは、名前だけでなくラベルに書かれた火入れの有無や保存方法も確認してみましょう。
生酒と生原酒は何が違う?
また同様に新酒のお酒には「生酒」「生原酒」という表記もよく見られます。生酒は、火入れをしていない日本酒のことを表しており、新酒はこの生酒の状態で出荷されることが近年では多くなっています。また、生原酒は火入れをせず、かつ、加水もしていない日本酒のことを意味しています。
フレッシュで軽快な生酒の味わいに加えて、旨味やアルコール感も強く感じやすいのが生原酒の特徴です。搾られたそのままの味わいを試してみたい方は、新酒の中でも「生原酒」という表記がある商品を選んでみることをおすすめします。
福島で新酒が造られる季節
福島県は、会津、中通り、浜通りの3つの地方で気候が大きく異なる地域です。特に会津地方は冬の寒さが厳しく、雪の多い地域として知られています。
日本酒造りでは、発酵中の温度管理が重要です。気温が低いと酵母の働きが緩やかになり、時間をかけて香りや味わいを整えやすくなります。こうした冬の環境を生かして行われる酒造りは、寒造りと呼ばれています。
現在では冷却設備や空調設備を使って温度を管理する酒蔵も多いため、酒造りの時期は蔵によって異なります。それでも、秋から冬に仕込みを始め、11月から春にかけて新酒を出荷する流れは、福島の多くの酒蔵で見られます。
11月にはその年の早い仕込みから生まれた初しぼりが登場し、12月になると生原酒やおりがらみ、にごり酒なども増えていきます。1月から3月にかけては、寒造りで仕込まれた新酒や吟醸系の日本酒が続きます。
ひと口に福島の新酒といっても、発売時期や味わいはさまざまです。冬から春にかけて少しずつ登場する商品を追いかけるのも、新酒シーズンの楽しみ方のひとつです。
新酒ならではのみずみずしい味わい
新酒の大きな魅力は、熟成を重ねた日本酒とは異なる、若々しく生き生きとした味わいです。
商品によって異なりますが、搾ってから間もない日本酒には、青リンゴやマスカットのような爽やかな香り、軽快な酸、口の中ではじけるようなガス感が残っていることがあります。
米の甘味や旨味をはっきりと感じられるものや、滓を残したことで柔らかなコクを楽しめるものもあります。
一方で、熟成前の新酒には、わずかな苦味や渋味、アルコールの刺激を感じる場合があります。これも、新酒が持つ若さや輪郭の一部です。時間の経過とともに味が落ち着いていくため、開栓直後と数日後の変化を比べる楽しみもあります。
まずはよく冷やして味わい、少しずつ温度が上がるなかで香りや旨味がどのように変化するか試してみるのもおすすめです。
福島で味わいたいおすすめの新酒
福島県内では、毎年多くの酒蔵から個性豊かな新酒が発売されます。ここでは、ふくしま彩り便で販売実績のある新酒を紹介します。
奥の松 純米吟醸 新酒しぼりたて
二本松市の奥の松酒造が手がける、冬季限定の新酒です。
果実を思わせる香りと軽やかな旨味、新酒らしいみずみずしさを楽しめます。生の状態で貯蔵し、出荷時に火入れをする生貯蔵酒として造られています。
しぼりたてと書かれていても、必ずしも生酒とは限らないことが分かる商品でもあります。
人気一 初しぼり 純米吟醸
二本松市の人気酒造が冬季に届ける、純米吟醸の初しぼりです。
初しぼりらしい軽快さと優しい甘みが口に広がり、吟醸酒ならではの華やかな香りを楽しめる、後味も余韻が広がる最初から最後まで楽しい一本です。
千駒 純米 初しぼり
白河市の千駒酒造が手がける純米酒の初しぼりです。
穏やかな香りと爽やかでみずみずしい口当たりが特徴で、米の旨味を感じながらも、後味はすっきりとしています。刺身や焼き魚、鍋料理など、冬の食卓にも合わせやすい新酒です。
月弓 純米吟醸 しぼりたて
会津若松市の名倉山酒造が造る、冬季限定のしぼりたてです。
福島県オリジナルの酒米「夢の香」を使用し、爽やかな果実香とまろやかな口当たりを楽しめます。滓を残したおりがらみの商品では、米の旨味や柔らかなコク、わずかなガス感も感じられます。
生酒やおりがらみは保存方法にも注意
新酒のなかでも、生酒やおりがらみ、にごり酒は温度変化の影響を受けやすい商品です。
ラベルに要冷蔵と書かれている場合は、購入後すぐに冷蔵庫で保管してください。配送時にクール便が指定されている商品もあります。
おりがらみや活性にごり酒は、瓶の中に炭酸ガスが残っていることがあります。横に寝かせず、冷蔵庫の中で立てて保管し、開栓前に振らないようにしましょう。
開ける際には、栓を少しずつ緩めながらガスを逃がすと、吹きこぼれを防ぎやすくなります。
開栓後は冷蔵庫で保存し、香りや味わいが変わらないうちに早めに楽しむのがおすすめです。
福島の冬を、新酒とともに味わう
新酒は、その年の米と酒蔵の技術が形になり、いち早く私たちのもとへ届く日本酒です。
みずみずしく軽快な酒、華やかな香りを楽しめる酒、米の旨味が力強く広がる酒、おりやガス感を残した酒。福島県内の酒蔵から届く新酒には、それぞれ異なる個性があります。
同じ銘柄でも、造られる年によって米の状態や発酵の進み方は変わります。毎年の違いに出会えることも、新酒を味わう面白さです。
冬から春にかけての限られた季節にしか出会えない福島の新酒を、ぜひ食卓で楽しんでみてください。

