福島の日本酒蔵が手がける焼酎|米・酒粕・そばから生まれる、もうひとつの地酒
福島には、日本酒蔵が造る焼酎があります
福島の地酒と聞くと、多くの方は日本酒を思い浮かべるかもしれません。会津、喜多方、二本松、南会津など、福島には個性豊かな酒蔵があり、米、水、気候を生かした日本酒造りが受け継がれてきました。
しかし、福島の酒蔵が手がけているのは日本酒だけではありません。県内のいくつかの日本酒蔵では、米焼酎や粕取り焼酎、そば焼酎、麦焼酎、芋焼酎なども造られています。
なかでも注目したいのが、日本酒造りの技術や副産物を生かした焼酎です。酒米、米麹、清酒粕、純米酒など、日本酒蔵だからこそ扱える素材を使い、焼酎という形で新しい味わいを生み出しています。
福島の酒蔵が造る焼酎は、強い原料感で押すというより、やわらかさや上品さを感じやすいものが多い印象です。日本酒の延長線上にある香りや口当たりを楽しめるため、焼酎にあまり馴染みがない方にも入りやすいお酒といえます。
日本酒蔵が焼酎を造る理由
日本酒蔵が焼酎を造る理由のひとつに、酒粕の活用があります。日本酒は、米、米麹、水を発酵させたもろみを搾って造られます。そのときに生まれるのが酒粕です。
酒粕は、粕汁や甘酒、漬物などにも使われますが、酒蔵ではこの酒粕を蒸留して焼酎にすることがあります。これが粕取り焼酎です。日本酒の香りや旨味の余韻を残しながら、蒸留によってすっきりとした酒質に仕上がるのが特徴です。
また、清酒蔵には、米の扱い、麹づくり、発酵管理、低温管理といった技術があります。焼酎造りでも、麹や発酵は重要な工程です。そのため、日本酒蔵が持つ技術は、焼酎造りにも自然に生かされます。
さらに、焼酎はロック、水割り、お湯割り、ソーダ割りなど飲み方の幅が広いお酒です。日本酒とは違う楽しみ方を提案できるため、酒蔵にとっては新しいお客様との接点にもなります。日本酒ファンにとっても、好きな蔵の焼酎を知ることで、蔵の個性を別の角度から楽しめます。
福島で米焼酎や粕取り焼酎が多い理由
福島の日本酒蔵が手がける焼酎では、米焼酎や粕取り焼酎が目立ちます。これは、福島が米どころであり、日本酒蔵が日常的に米や米麹を扱っていることと深く関係しています。
日本酒蔵にとって、米は最も身近な原料です。米を洗い、蒸し、麹を造り、発酵させるという工程は、日本酒造りの基本です。焼酎造りでも米や米麹を使うことで、蔵が長年培ってきた技術を生かしやすくなります。
また、酒粕を使う粕取り焼酎は、日本酒蔵ならではの焼酎です。日本酒を造る過程で生まれる酒粕を、ただの副産物として終わらせず、もう一度価値あるお酒へと生まれ変わらせる考え方があります。
一方で、福島の酒蔵が手がける焼酎は米や酒粕だけに限られません。人気酒造のように、福島県産のそばや麦を使った焼酎を手がける蔵もあり、米と酒粕を中心にしながらも、地域の農産物を生かした広がりを持っています。
日本酒と焼酎は何が違うのか
日本酒と焼酎の大きな違いは、造り方にあります。日本酒は醸造酒、焼酎は蒸留酒です。
日本酒は、米のでんぷんを麹の力で糖に変え、その糖を酵母がアルコールに変えることで造られます。発酵したもろみを搾り、ろ過や火入れ、貯蔵などを経て仕上げます。米の旨味、甘味、酸味、香りがそのまま酒の味わいに残りやすいのが特徴です。
一方、焼酎は発酵させたもろみや酒粕などを蒸留して造ります。蒸留とは、アルコールや香りの成分を熱によって取り出す工程です。この工程があるため、焼酎は日本酒よりもアルコール度数が高く、香りや口当たり、キレが味わいの中心になります。
つまり、日本酒は米の旨味や発酵のふくらみを楽しむお酒、焼酎は原料の香りや蒸留によるすっきり感を楽しむお酒と言えます。福島の日本酒蔵が造る焼酎は、この二つの世界の間にあるような存在です。日本酒らしい上品さを持ちながら、焼酎ならではの軽やかさも楽しめます。
福島の酒蔵系焼酎の特徴
福島の酒蔵が手がける焼酎の特徴は、やわらかく、上品で、食事に合わせやすいことです。
会津や南会津、喜多方などの酒どころは、寒冷な気候、雪解け水、良質な米に恵まれています。こうした風土は、日本酒だけでなく、焼酎の仕上がりにも影響します。特に米焼酎や粕取り焼酎では、強い香りで押すというより、すっきりとした飲み口や穏やかな香りが出やすくなります。
また、福島の酒蔵系焼酎には、日本酒造りの考え方が反映されています。米麹を使うだけでなく、純米酒を原料にした焼酎や、清酒粕を蒸留した焼酎もあります。なかには、長期熟成や樽熟成によって、まろやかさや奥行きを出したものもあります。
さらに、そば焼酎や麦焼酎のように、地域の農産物を生かした焼酎もあります。日本酒蔵が焼酎を造ることで、福島の米、水、そば、麦といった地域資源を、さまざまな形で楽しめるようになります。
福島の焼酎を手がける代表的な酒蔵
福島県内には、日本酒を主業としながら焼酎も展開している酒蔵があります。
花春酒造(会津若松市)
清酒粕を使った粕取り焼酎が造られています。酒粕由来の芳醇な香りと熟成感が特徴で、日本酒蔵の副産物を生かした焼酎として分かりやすい存在です。
ほまれ酒造(喜多方市)
吟醸粕のみを使用した粕取り焼酎「おんつぁ 黒ラベル」や、米、米麹、清酒粕を使った本格米焼酎「豊年」があります。日本酒の香りに通じる華やかさと、米焼酎らしいまろやかさを楽しめるタイプです。
奥の松酒造(二本松市)
粕取り焼酎のほか、芋や麦を使った焼酎も展開しています。日本酒の蔵でありながら、焼酎の幅広い飲み方にも対応した商品づくりが印象的です。
人気酒造(二本松市)
日本酒「人気一」だけでなく、本格焼酎も手がけています。「本格焼酎そば 福島の風出逢い」は、福島県会津坂下産のそばを使用したそば焼酎です。原材料は、そば、麦、米こうじで、すっきりとしたまろやかな味わいが特徴です。水割り、ロック、ストレートで楽しめる焼酎として紹介されています。
宮泉銘醸(会津若松市)
日本酒「宮泉」「寫樂」で有名な清酒蔵ですが、米焼酎や麦焼酎、純米酒を造り、それを蒸留して仕込んだ焼酎も流通しています。酒造好適米や純米酒を生かしており、清酒蔵らしい香りとまろやかさが魅力です。
開当男山酒造(南会津町)
清酒粕を使った粕取り焼酎「奥会津焼酎 渡」や、シェリー樽熟成タイプの焼酎が見られます。南会津の風土を背景に、やわらかく上品な焼酎へ仕上げている点が特徴です。
笹の川酒造(郡山市)
日本酒だけでなく、焼酎、ウイスキー、リキュールなど幅広い酒類を手がける蔵です。自社の清酒や純米酒を使った焼酎、地元産の芋を使った焼酎など、酒蔵としての技術と地域性を組み合わせた商品があります。
福島の酒蔵焼酎の楽しみ方
福島の酒蔵が造る焼酎は、タイプによって飲み方を変えると魅力が分かりやすくなります。
米焼酎など、吟醸香を感じるようなすっきりしたタイプは、まずロックや少量の水割りで試すのがおすすめです。香りが穏やかに立ち、米由来のやわらかさを感じやすくなります。白身魚、冷ややっこ、塩焼き、淡い味付けの料理とも合わせやすいでしょう。
粕取り焼酎など、熟成感のあるタイプは、ロック、水割り、お湯割りで印象が変わります。酒粕由来の香りや、熟成による丸みがあるものは、少し温度を上げることで香りが開きやすくなります。焼き鳥、照り焼き、燻製、チーズなど、香ばしさやコクのある料理とも相性がよいです。
そば焼酎は、すっきりとした飲み口を楽しみたいときに向いています。ロックや水割りでそばの香ばしさを感じたり、食中酒としてそば料理や和食に合わせたりするのもよいでしょう。人気酒造の「本格焼酎そば 福島の風出逢い」も、水割り、ロック、ストレートがすすめられています。
また、ソーダ割りにすると、焼酎に慣れていない方でも飲みやすくなります。米焼酎をソーダで割り、柑橘の皮を少し添えると、食中酒としても楽しめます。樽熟成タイプなら、ハイボールのように楽しむのもよいでしょう。
保存は、日本酒ほど神経質になる必要はありませんが、直射日光や高温は避けたいところです。香りを大切にしたい焼酎ほど、開栓後は涼しい場所で保管すると安心です。
日本酒好きにこそ試してほしい福島の焼酎
福島の日本酒蔵が手がける焼酎は、焼酎好きだけのためのお酒ではありません。むしろ、日本酒が好きな方にこそ試してほしいお酒です。
米の扱い、麹づくり、発酵管理、酒粕の活用。そこには、日本酒蔵が長年積み重ねてきた技術と考え方があります。焼酎という形になっても、その背景には福島の米、水、気候、蔵の個性が息づいています。
さらに、そば焼酎のように、地域の農産物を生かした焼酎まで視野を広げると、福島の地酒の楽しみ方はさらに豊かになります。
いつもの日本酒とは少し違うものを飲みたいとき。好きな酒蔵の新しい一面を知りたいとき。福島の酒蔵が造る焼酎は、地酒の楽しみ方を広げてくれる一本になります。
日本酒の名産地・福島には、まだあまり知られていない焼酎の魅力があります。米焼酎、粕取り焼酎、そば焼酎、長期熟成、樽熟成。それぞれの個性を比べながら、福島の酒蔵が生み出すもうひとつの地酒を味わってみてください。